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なむなむブログ

京大薬学部4年生。書評、京都観光、考えたことをつらつらと。

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【書評】『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス

書評

32歳のパン屋店員、チャーリィ・ゴードンの手記という形式をとっており、心理の変化がありありと表現されています。

 

山P主演でドラマ化されていたので有名になったと思いますが、原作とはストーリーが異なるので、ぜひ原作も読んでもらいたいです。僕はドラマの方は見ておりませんが笑

あらすじ

 

舞台はニューヨーク。ドナー・ベイカリーで働く主人公チャーリィ・ゴードンは、知的障害を持っており、IQ70と言われていました。同僚にからかわれながらもそれを友情と

 

捉え、幸せに過ごしていました。ですが、チャーリィはずっと、「あたまがよくなりたい」と思っており、ある日、知的能力を向上させる脳外科手術を受けないかと勧められました。すでにその手術は、アルジャーノンという名のマウスに施されており、知能の向上は認められていましたが、長期的な安全面や人間への応用については未知で、チャーリィは実験台として選ばれたのでした。

「あたまがよくなりたい」と望んでいたチャーリィにとっては願ってもないチャンスで、その手術を受けることを決めます。その回復経過を日記の形式で綴ったのが、この「アルジャーノンに花束を」です。

 

手術直後、文字も満足に書けず、簡単な知能テストではマウスのアルジャーノンにも負けるほどだったチャーリィは、みるみる知能を獲得し、外国語を何カ国語もあやつり、論文を執筆するほどになります。

 

「あたまがよくなりたい」「IQが上がればみんなが僕のことを好きになって友達になってくれる」

 

と考えていたチャーリィの、知能を獲得するという望みが叶いました。

しかしそれと同時に、天才となったチャーリィは衝撃を受けます。今まで気づかなかった、たくさんの悲しい事実を知ることになったのです。

 

友達だと思っていた同僚が、実は自分のことをバカにしていたこと、同僚が店のお金を店主に隠れてくすねていたこと、幼少時代の自分が家族に迷惑をかけていたこと、大人になった自分の性的欲求への悩み、天才になった自分の傲慢さ・・・

 

知らなければ幸せだったはずのことを知っていまい、望んでいたはずの知能を獲得したにも関わらず幸せになれないチャーリィ。

 

そんな苦悩の中チャーリィは、同じ脳外科手術を受けたマウスのアルジャーノンの知能が低下しているのを見て、自らの知能が失われていくことを予感します。

莫大な知識が失われ、読み書きすらできなくなっていき、知能の崩壊は刻一刻と進むんでいく・・・

最後に手術前の知能に戻ったチャーリィが感謝の気持ちと別れの言葉を述べて幕を下ろします。

 

感想

 

ひらがなや誤字脱字を巧みに使うことで知能や心理の変化を描写していたのが見事でした。もし第三者視点で描かれていたら、ここまで明瞭にチャーリィの内面を表現することはできないと思います。

 

そしてストーリーが悲しく素晴らしいです。理想の自分を想像し、叶えたにも関わらず、むしろ不幸になってしまう様は、僕たちの生活にも当てはまることかもしれません。

僕たちは、何かを望むばかりで現状に満足せず、不足ばかりを嘆きます。

 

現状に幸せがないのか?本当にそれさえ手に入れば幸せなのか?

 

今を見つめ直すことの重要性が問われているように思えました。

 

また効率、生産性を求めすぎる世の中への警鐘のようにも思えます。知識、知能を高めるだけではなく、他者への愛情や道徳を持ってこそ人は幸せになれるんじゃないかと。

自動化、効率化が叫ばれる現代だからこそ、人との関わりや思いやりを持つことを忘れてはなりません。

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